初診・出産年齢・服用期間

31歳


32歳


8か月

初診前の状況について

今までに流産2回を経験されており、不育を漢方薬で治したいと来院されました。子宮筋腫(3~4cm大)が3つ、不妊治療歴はありません。

診療と診断

身長159cm、体重68.5kgと見かけはかた太りの実証タイプです。月経は順調。基礎体温は二相性を示していますが、全体的にガタガタで低めです。腹診すると、胸脇苦満、左の瘀血圧痛を認め、腹部は臍下不仁。先ず代謝を高めて、脂肪を去り、瘀血を解消しようと考えて、大柴胡湯合桂枝茯苓丸料を投与しました。冷えや蕁麻疹もあるため、附子、薏苡仁を加味し、体重を5kg減らすように指示しました。
2ヵ月服用後、体重が65kg台になり、お腹回りは随分スッキリしました。腹診では、瘀血もほぼ消失しましたが、臍下不仁(臍の下がふわふわして弾力がない状態)であるため、大柴胡湯合桂枝茯苓丸料に加え当帰芍薬散料合八味地黄湯を投与し、2薬方を1日交互の服用としました。
2薬方を1か月服用後、体重は64kg台と順調に減量。同2薬方を1対1の割合から1対2とし、当帰芍薬散料合八味地黄湯を多めに服用するように投与しました。その4か月後には臍下不仁も解消し、お腹はちょうど良い弾力となりました。10日前に卵管造影を行い通過の問題はないとのこと。検査直後は妊娠しやすいのでタイミングを合わせるように話しました。その1か月後の来院時に「自然妊娠しました」と報告を受けました。流産を2回しているので流産防止に芎帰膠艾湯を投与。順調に経過し、女児を無事に出産されました。


治療のポイント

まず、大柴胡湯合桂枝茯苓丸料で胸脇苦満、瘀血を解消し、体重を落としました。この方の下腹部は軟弱で虚していたため、当帰芍薬散料合八味地黄湯を投与。当帰芍薬散料で身体を温め、体液を調整して卵巣・子宮に力をつけ、八味地黄湯で腎虚(不妊に関していえば、性機能が弱っている状態)を補って妊娠・出産に導きました。見かけは実証タイプですが、下腹部は臍下不仁で腎虚。腹証の重要性を感じる症例でした。

処方した漢方薬

大柴胡湯合桂枝茯苓丸料だいさいことうごうけいしぶくりょうがんりょう
帰芍薬散料合八味地黄湯きしゃくやくさんりょうごうはちみじおうとう