[vol.18]多嚢胞性卵巣症候群、血府逐瘀湯で瘀血を去り妊娠
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初診・出産年齢・服用期間

37歳

38歳

11か月
初診前の状況について
クロミッド等を服用しタイミング指導にて第一子を妊娠し出産され、二人目を希望して排卵誘発剤、黄体ホルモン補充、人工授精を行うが妊娠に至らず、現在、漢方薬(当帰芍薬散、温経湯)を服用中。どうしても2人目が欲しいと来院されました。
診療と診断
身長157cm、体重44kg と中肉中背。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があり、月経周期が30~50日と不順で経血量が少なく塊が出るとのこと。腹診すると、左瘀血圧痛点が顕著で下腹部はやや硬いが力がありません。生理中の下痢があり、手足の末端より太もも、お尻の中心部の冷えが強い。腹証から血府逐瘀湯を投与し、冷えがあるので附子を加味しました。
2か月服用後、瘀血の圧痛点は消失し、3か月半後には、お腹の硬さも取れました。腹証より当帰芍薬散料と八味地黄湯の合方を投与。その後は、附子、補陰、補血作用のある熟地黄、活血作用のある紅花、桃仁などを時々の証に合わせて加減し、同薬方を継続投与しました。初診から1年弱たった頃、検査薬で陽性反応があったと連絡がありました。妊娠初期に出血等もあったため、25~26週ごろまで芎帰膠艾湯を服用し、自然分娩にて無事女児を出産されました。

治療のポイント

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の皮膜が厚く、排卵出来ずに卵巣内に成熟卵や多数の未成熟卵がある状態で、排卵障害により不妊症や生理不順、無月経の一因にもなります。
この方は月経前症候群(PMS)、生理の凝血などがあり典型的な瘀血タイプ。太ももやお尻の冷えに加え生理中の下痢もあるので、血府逐瘀湯で瘀血を去り血液の流れを良くしました。その後、当帰芍薬散料合八味地黄湯を服用して妊娠されました。最近ではPCOS に温経湯を用い効果を上げている症例もあります。
処方した漢方薬
血府逐瘀湯
当帰芍薬散料合八味地黄湯

