更年期障害とは

更年期障害は、閉経により生理が止まり、今までの体内のホルモン環境が一挙に変化することで引き起こされる気・血・水の乱れた状態です。そして、それに伴う脳の混乱状態であり、自然な流れの中での体の一つの変化ともいえます。

漢方の考えでは 気・血・水の流れを大事にします。この気・血・水の流れが体内を順調に巡っていれば健康を保て、流れが滞ると病気に陥ると考えます。「気」は自律神経・メンタル・心の問題。「血」は血液の流れや瘀血。「水」は冷えやむくみ及び水毒です。更年期障害は、閉経により気・血・水の流れが大きく乱されることにより生じる症状なのです。

暫くして、生理のない体の環境を脳が察知すると、脳は体をその環境に順応させようと無駄な指令を送らなくなり、更年期症状も自然に落ち着いてきます。そのような意味では更年期障害を必要以上に身構えて恐れることはなく、リラックスした気持ちで上手に付き合っていくことが大切になります。

更年期障害には
様々なステージがある

更年期障害とは

図のように、更年期症状は、閉経時期に限ったことではなく、年齢などの影響でホルモン環境が変化した時にあらわれやすい症状です。たとえば出産後や授乳期のマタニティブルー、初潮の頃の若年性更年期障害、30代前半の女性の本厄の頃のプレプレ更年期。30代から40代の節目の年代のプレ更年期。そして、50歳前後の閉経による本来の更年期。また歳を取ってからあらわれる老年期の更年期症状と、女性の様々な年齢や年代の局面でみられる症状です。

更年期は、閉経期の本来の更年期障害に関わらず、人によっては年齢の節目毎に通る道でもあります。更年期症状はないに越したことはありませんが、脳の混乱が終わればいずれは自然に止むものです。難しいことかも知れませんが、自然の流れとして受け止めることも大切です。

更年期障害の症状と
ホットフラッシュについて

更年期症状は、気・血・水の乱れからくるので訴えも多彩です。頭痛、肩こり、冷え、のぼせ、寒気。動悸、めまい、息切れ、立ちくらみ、吐き気、倦怠感。イライラ、気分不安、憂鬱感などのように肉体的精神的に症状は多岐にわたります。

更年期障害とは

更年期症状の代表的な症状に“ホットフラッシュ” (瞬間湯沸し器のように激しく変化するとの意味)があります。体が熱くなったと思ったら急に寒くなり吐き気が胃から突き上げてくる。その後で体中に冷や汗をかいて、心身共に疲れ果てグッタリする。その発作みたいな症状が、短い時は数十秒、長い時は数分から十数分続きます。それが昼夜関係なしに日に何回も来たりします。

また、睡眠中に更年期症状が度々来ると、安眠できず睡眠不足に陥り疲れが取れないため、心身共に益々疲労困憊していきます。このような状態が続けば鬱状態になる人もいます。患者さんの中には得体の分からない物が襲ってくると表現した人もいます。

更年期症状には個人差があります。非常に症状の強い人、症状のほとんどない人、長期間に渡り続く人や短期で終わる人など個人により症状の出方にはかなり差があります。女性は生理痛のある人も多く、一般的に痛みに対して男性より我慢強い傾向があります。最近では“隠れ我慢” という言葉があるくらいです。

今までの臨床経験からすると、高度生殖医療などでホルモン劑を多用している人ほど強く更年期症状がでやすい印象があります。たくさんの卵を作ろうとしてホルモン劑で卵巣や身体に負担をかけ瘀血が作られるためだと思われます。また、生理のない男性にも瘀血があると更年期症状があらわれる人がいます。男性更年期障害です。

そして、男女問わずしてこの更年期症状に用いる漢方薬に『加味逍遥散(かみしょうようさん)』があります。患者さんの中には、一年以上に渡り更年期症状で苦しんだ人が、この『加味逍遥散』の服用によりほぼ一週間で症状が消失した人がいます。

更年期障害と漢方

漢方的に考えれば、更年期障害も『未病(みびょう)』の一つの状態です。健康の秘訣は、先に述べた気・血・水をバランス良く巡らし、『未病』の状態を改善することです。しかし、閉経によりホルモンバランスが乱れると気・血・水の流れも乱れ肉体的精神的な症状があらわれます。これが更年期症状です。更年期障害で良く用いられる『加味逍遥散』は、この気・血・水の流れを改善する生薬がバランス良く配合され、体を元の良好な流れに戻して不快な更年期症状を取り去る優れた処方と言えます。

妊活中の患者さんにも更年期様症状を呈する人がいます。妊活中のストレスにより気・血・水の流れが乱れて起きるものだと考えられます。また不妊治療時のホルモン剤投与により子宮・卵巣に無理な負担をかけた時にも瘀血の蓄積により更年期様症状があらわれたりします。特に瘀血が強く関与する場合はPMS(生理前症候群)のように生理前にあらわれます。妊活更年期障害とも呼べます。

また、生理不順でピルを服用したり、子宮内膜症の治療で生理を止めた場合などにも同様の更年期症状を呈する人がいます。いずれの場合でも『加味逍遙散』が有効に働きます。

加味逍遥散

加味逍遥散は、冷え性、虚弱体質、月経困難、更年期障害、血の道症などに処方される漢方薬です。ストレスによる肝気の滞りを改善する柴胡、冷えを治し体を暖める当帰・芍薬、ほてりを取る山梔子、気を巡らし気分を楽にする薄荷、さらに瘀血を軽減する牡丹皮、水分代謝を良くする茯苓・蒼朮など気・血・水を巡らす薬がバランス良く配合されています。昔から婦人の不定愁訴症候群や更年期障害によく用いられてきました。女性に限らず、同様の症状を訴える男性にも用いられます。決して女性だけの薬ではありません。

更年期障害の漢方薬では、加味逍遥散が特に有名ですが、症状や年齢によっては他の処方(女神散・血附逐瘀湯・通導散等々)が有効な場合もありますので、漢方医などの専門家に相談して服用するのが良いでしょう。

当院は漢方専門の診療所です。更年期障害はもちろん、慢性疾患や原因不明の体調不良等も漢方の得意とするところです。不妊症以外のご相談もお受けしていますので、ご相談の方はお電話またはWEBにてご予約ください。


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