頭痛・生理痛・便秘を改善し妊娠しやすい母体へ ― 2『温下剤(おんげざい)』

6月8日(金)~10日(日)に大阪国際会議場にて日本東洋医学会学術総会が開催され、同学会の産婦人科ワークショップにて漢方不妊治療の発表をしました。学会の準備に終われ、暫くブログを休んでいましたが、今回からまた再会します。引き続き、これからの”子供作り”に役立つ母体作り、体の仕組みや健康などについて、分かりやすく説明していくつもりです。今後とも、よろしくお願いいたします。

さて、今回は、前回の「頭痛・生理痛・便秘の続きです。今回のテーマは便秘です。
この便秘もやはり冷えに関連します。標題の『温下剤(おんげざい)』は、温めて下すと云う意味ですが、これは慢性的な便秘改善の極意でもあります。

冷たい物を飲んだり食べたりしておこる急性の冷えは下痢ですが、慢性の冷えは腸が冷えて動きが鈍くなったもので、便秘の大きな原因になります。このような便秘に瀉下剤の「センナ」のようなものだけを服用しても、余計に腸を冷やして下痢や軟便になってしまいます。すっきりとした気持ちの良い便通ではありません。男性などで暑がりで体内に熱がこもるタイプの人は、便も熱で乾燥して固くなって便秘になります。そのような場合は、瀉下剤のような腸を冷やす便通薬でも構いません。しかし、女性でこのような方はほとんどいません。

多くの女性の場合、便秘の原因の大半は冷えです。そのような時は、まず冷え症の薬を服用し、腸を温めて動かし、その動いた腸に下剤を少し加えます。

先ほども述べましたが、急性な冷えは下痢、慢性の冷えは便秘になります。便秘だからといって、センナや乳製品、冷たい水分だけに頼っていると、体がより一層冷えていきます。その時は出るかもしれませんが、腸も冷えて動かなくなり、ますます酷い慢性的な便秘になっていきます。普通の便秘薬の多くは『寒下剤(瀉下剤)』です。ただ身体を冷し、腸を冷し下すだけの薬です。そして、それは子宮・卵巣を冷すことになり、ひいては不妊症にもつながります。

漢方の場合では、冷えからくる便秘には『温下剤(おんげざい)』を使います。腸を温め、動きを良くし、そこに下剤を使います。温めて動きの良くなった腸に使うので、下剤が少ない分量で済み、無理なく気持ち良く便秘を治す事ができます。冷え症の患者さんの中には、この温下剤を服用し、体が暖まって便秘が治り、その結果として妊娠する人もいます。それだけ身体を温めることが不妊治療では大事になってくるのです。

そして、瘀血や水毒のある人は、より冷えの影響を強く受けます。体重の増加やホルモン剤の過剰投与は新たな瘀血を生み出し、水分の過剰摂取は新たな水毒を生み出します。日頃から、意識を持って生活に十分に注意を払う事が大切だと思います。