漢方で*赤ちゃん迎える院長blog

風邪症候群(新型コロナ)と漢方薬(正しい葛根湯の飲み方)~葛根湯・麻黄湯

漢方の古典に『傷寒論(しょうかんろん)』という本があります。約2000年前に張仲景(ちょうちゅうけい)によって書かれたとされています。その序文に、”私(張仲景)の一族は昔200人以上もいたのに、建安元年(西暦196年)から10年も経たない内に、死んだ者が3分の2に達し、その死者の10人に7人は傷寒(伝染病)によるものだった。たくさんの人が亡くなり若い人も亡くなり、彼等を救えかった無念さ悲しさ悔しさから本書を書くに至った』とあります。

ここでの「傷寒」とは、急性の熱性の感染病のことです。チフス、マラリア、インフルエンザ、20世紀初頭のスペイン風邪。そして近年の致死率の高いSARS、MERS。また致死率は低いが感染力の高い、今回の新型コロナも「傷寒」の一つといえます。

『傷寒論』が書かれたのは約2000年前ですが、その当時、というよりは歴史を遡れば、人類が地球上に存在する以前より、急性の感染症は多くの生物の間に存在していました。それが「人類の歴史はウイルスとの戦い」と言われる所以です。旧型および新型の風邪のウイルスもしくはインフルエンザの場合でも、多少の症状の違いがありますが、同じ熱性の感染病の範疇で大筋では症状(頭痛・発熱・悪寒・体痛など)は、ほぼ同じだと思います。

一般に「傷寒」の病の初めは、皆さんもよくご存知の『葛根湯(カッコントウ)』を服用します。「傷寒」とは字のごとく、寒さに傷つき敗れるという意味ですから、感染症(風邪など)の初めはどんな種類にしろ、最初は寒気から始まります。この寒気により毛穴が閉じて熱を体内に溜め込み体温を上げます。入ってきた外敵(ウイルスや細菌)を体温の力で駆逐しようとするのです。

この際、漢方用語で無汗〈ムカン〉の状態になります。無汗とは皮膚に湿気がなくサラサラした状態のことです。この状態を漢方では太陽病時期といいます。風邪が表症にあり、まだ体の中に侵入してない時期であり、本来はこの時期に治すのが大事です。

そして、ある程度のウイルスや細菌が駆逐ができれば、毛穴が開き汗が出て徐々に熱が下がっていきます。それが、自らが備えている自然治癒力です。体内に浸入した外敵から体を守る免疫機能(免疫力)です。風邪の特効薬や薬は、一部のインフルエンザを除いて薬はありません。だからこそ、自らが備えている自然治癒力(免疫力)を高めることが大切になるのです。

風邪の本質は冷えですから、熱も冷えの裏返しの症状です。ですから、むやみやたら解熱剤を使うと却って体が冷え、免疫力が低下しウイルスを駆逐する力が低下します。そして、『葛根湯:冷やす薬でなく体を暖める薬です。単なる解熱剤でありません。』も用いる場合も、風邪の本質が冷えということをから考え、”熱々ふーふー”で飲むことが重要です (夢夢、水で飲まないように┅、力が半減以下ですよ)。

体を暖め毛穴が開かせ、体温を下げる手助けをするのが『葛根湯』の役目です。自らの自然治癒力を高める薬であり、決してウイルス自体を駆逐する薬ではありません。

風邪の始めには、一般的には『葛根湯』を用いますが、インフルエンザのように症状が重い場合は『麻黄湯(マオウトウ)』を用います。そして発熱が激しくより重篤の場合は『大青竜(ダイセイリョウトウ)』、『柴葛解肌湯(サイカツゲキトウ)』、『柴陥湯(サイカントウ)』などを用います。新型コロナウイルスに罹って軽症の場合は、『葛根湯』を服用して体を暖め表症の風邪を追い出す薬です。ただし、新型コロナウイルスは最初から一気に悪化することもあり、そのような場合は最初から『柴葛解肌湯』などを服用します。

~これは、漢方でいう、太陽病と小陽病もしくは陽明病の合病のことですが、その話は少し難しいので次回位に話を回します~

ただし、新型コロナウイルスに対して、多くの人は免疫もなく抗体もありませんので、急激に重篤かしやすい人も多く見られます。そのような場合は、速やかに医療機関を受診すべきだと考えます。

次回は、漢方薬の補剤についてです。

PS) 先週の土曜日、夕方の銀座中央通りです。父が銀座に漢方不妊治療の診療所を開いてから30年余りが経ちますが、こんな淋しいこんな悲しい銀座は見たことがありません。日本一華やかな町、銀座で開業する事を目指した鹿児島の田舎育ちの父。こんな姿の銀座を知らずに一昨年亡くなり、良かったかも知れません。

場面は違いますが、張仲景の何も出来ない悲しい気持ちが分かる気がします┅

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